「思い描いた風景を、言葉で伝えるだけでAIが描いてくれたら…」
そんな未来がすぐそこまで来ています。
Googleの画像生成AIモデル「gemini2.0flash imagegeneration」のAPIがプレビュー版公開時に、早速その実力を試すべく、簡単なアプリケーションを試作してみました。
この記事では、その開発プロセスと、見えてきた生成AI活用の勘所についてご紹介します。
試作したアプリ「The風景 for AI Creator」
今回開発したのが、こちらの「The風景 for AI Creator」です。
UIは非常にシンプル。ユーザーが「江戸の城下町」や「田舎の古い小さい宿で佇む猫の親子」といった簡単な日本語で、見たい風景のイメージを入力すると、AIがその指示に沿った画像を生成して表示します。過去に生成した画像も一覧で確認できる、ギャラリーのような機能も備えています。


開発の裏側:AppSheet × GAS × Gemini の強力タッグ
このアプリ、実は…AI開発で一般的なPythonなどのプログラミング言語は一切使っていません。開発の心臓部を担ったのは、以下のGoogle製ツールです。
- 構築環境:
- AppSheet: アプリのUI(見た目)と基本的な操作を担当。ノーコードで直感的にアプリを構築できます。
- Google Apps Script (GAS): AppSheetとGemini APIを繋ぐ「翻訳者」の役割。ユーザーの指示をAPIが理解できる形に整え、生成された画像をGoogleドライブに保存します。
- Gemini 2.0 Flash (image generation): 今回の主役である画像生成AI。GASからの指示に基づき、美麗な画像を生成します。APIキーはGoogle AI Studioで発行したものを使用しました。
- Googleドライブ: 生成された画像の保管庫です。
アプリの動作フロー
- ユーザーがAppSheetの画面から、生成したい画像のプロンプト(指示文)を入力します。
- その指示がGASに送られます。
- GASは、あらかじめプログラム内に埋め込んでいる固定の指示文と、ユーザーからの指示文を組み合わせ、最終的なプロンプトを生成します。
- 完成したプロンプトをGemini APIに送信します。
- Geminiが画像を生成し、そのデータをGASが受け取ります。
- GASは受け取った画像をGoogleドライブの指定フォルダに保存します。
- AppSheetがその画像を表示し、ユーザーは完成した風景画を閲覧できます。
開発目的とわずか「2時間」で実現できた理由
今回の最大の目的は「新しいGeminiの画像生成APIを、わたしたちがイメージするアプリにどれだけスムーズにラッパーできるか(組み込めるか)」を検証することでした。そしてもう一つ、「Python等を使わなくても、AppSheetとGASという身近なツールだけで高度なAIアプリが作れる」ことを示したかったのです。
結果、投下工数はわずか2時間。驚くほどのスピードで理想に近いアプリが完成しました。
この「爆速開発」が実現できた背景には、Gemini自身の協力があります。 もちろん、AppSheetでの画面設計や関数の設定は、従来通り人の手で行う必要があります。しかし、要となる「Gemini APIを呼び出すGASのコード」については、仕様を明確にしてGeminiに日本語で指示するだけで、骨組みとなるプログラムをほぼ自動で生成してくれました。これにより、開発工数を劇的に削減できたのです。
この手法は、今回の試作開発だけでなく、様々な業務システムの機能拡張にも応用できる大きな可能性を秘めています。ノーコードツールもプログラム知識無しでシステムを開発することができますが、スクラッチ的な開発を要するコーディング作業もノーコード領域に突入するかもしれません…
(プロである我々は…すこし寂しい気持ちがありますけども 苦笑)

生成AI開発で見えた「2つの重要なスキル」
今回の開発を通して、生成AIを使いこなす上で特に重要だと感じた点が2つあります。
- プロンプトエンジニアリングの重要性
AIが期待通りの結果を出してくれるかどうかは、まさに「プロンプト(指示文)の精度」にかかっています。どういう言葉で、どういう順序で、どういう制約を与えれば、AIがこちらの意図を正確に汲み取ってくれるのか。この「AIへの伝え方」をデザインするスキル、すなわちプロンプトエンジニアリングの重要性がますます高まっていくでしょう。 - 生成されたコードを理解し、改善/追加/修正する力
AIは驚くほど優秀なプログラマーですが、万能ではありません。生成されたコードが100%完璧に動作するとは限りません。最終的には、そのコードが何をしているのかを正しく理解し、エラーが出た際には自力でデバッグ(修正)できるスキルが不可欠です。AIを「優秀なアシスタント」として活用し、最終的な判断と責任は人間(自分自身)が担う、というスタンスが求められます。
おわりに
今回は、AppSheetとGAS、そして最新のGemini APIを組み合わせることで、いかに迅速にAI画像生成アプリを構築できるかをご紹介しました。
この記事でご紹介した「The風景 for AI Creator」にご興味をお持ちいただけましたら、実際に触ってお試しいただけるトライアルもご案内可能です。
また、弊社では生成AIの業務活用支援、DX推進の伴走支援を行っております。「自社のこの業務にAIは活用できないか?」「DXを進めたいが、何から手をつければ良いかわからない」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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